スローフォックストロット・クイックステップの起源は、1912年にアメリカからパリに渡ったカッスル夫妻が「ラグタイム」(ジャズの原型)に合わせて踊った「カッスルウォーク」というダンスとされています。このカッスルウォークはやがてアメリカ人のハリー・フォックスによって「フォックストロット」というダンス形式が作られました。

1920年代になるとアメリカで「チャールストン」という早いテンポのダンスが流行します。このチャールストンの流行がイギリスに伝わった際、イギリスではフォックストロットの曲をチャールストンの早いテンポで演奏したのですが、テンポが速すぎて今までのフォックストロットのステップでは踊ることが難しかったそうです。そこで、1924年にテンポの速いフォックストロットを「クイックステップ」、これまでのフックストロットを「スローフォックストロット」と二つに分けた、といわれています。

いずれも4拍子の4ビートリズムの曲が演奏される点では共通しますが、スローフォックストロットが大きな上下運動が少なく川の流れのようにスムーズに踊るダンスですから、使われる曲も程よく歩くテンポ(約120拍/分)で強弱の抑揚が少なく、穏やかな波のように柔らかな感じの曲が選ばれます。一方クイックステップはアップテンポで躍動感があり、早いテンポ(約200拍/分)でスピード感が溢れる演奏がされます。ベニー・グッドマン楽団の「Sing, Sing, Sing」、グレンミラー楽団の「イン・ザ・ムード」などが代表的なクイックの曲になります。