ジャイブとジルバは比較的最近のダンスです。1920年代にジャズ音楽が広まってゆく中、スイングジャズの演奏をバックに女性を左右に振って踊る「リンディホップ」というステップが流行します。このリンディーホップは年を経るごとに進化し複雑化されて様々なダンスが生まれてゆきました。その中の「ジッターバグ」のダンスが1940年代後半にイギリスへ渡り、イギリスの民族ダンスを元に改良されて「ジャイブ」が生まれました。

一方、終戦後の日本で米軍の将校らがキャバレーで踊っていた「ジッターバグ」が、やがて「ジルバ」という名前で日本国内に広く親しまれるようになりました。なぜ「ジルバ」という名前になった理由は、アメリカ兵士のジッターバグという発音が、日本人の耳には「ジルバ」と聞こえたから、と言われています(笑) つまり、ジャイブはジルバ(ジッターバグ)から生まれた、ということになりますね。

いずれも使われる曲はロックンロールやディスコ調のもの、あるいはアップテンポなスイングジャズが使われることが多く、曲のノリもよいので演奏する側も踊る側も年齢に関係なく一般ウケが良いです。 ジャイブとジルバには音楽的に明確な区分けは特にありません。しかし社交ダンスの本場イギリスに渡って生まれたジャイブがそのまま社交ダンスの競技ダンスのラテン種目として取り入れられ、ジャイブの起源であるジルバ(ジッターバグ)は競技ダンスに取り入れられなかった、ということもあり、『ダンス』としては明確な区分けがされる(ステップが違う)ということになっています。

ですのでこれらの曲を演奏する際は、同じ曲でもテンポが変われば「踊る側にはちゃんと違いがある」ということを意識して、踊る側の意向やダンスホールの方針などに合わせた選曲・テンポ設定をするのが必要です。

また、このジャイブやジルバの曲をスローテンポで踊るダンスの一つに「ブルース」があります。同じスローテンポの4ビート曲にスローフォックストロットがありますが、スロー・フォックトロットは、流れるような旋律と流暢なリズムで、アクセントが必ず1拍目と3拍目(オンビート)にあるのですが、ブルースは、これとは反対にフレーズやリズムが断片的でアクセントが1~4拍目に均等にあらわれたり、場合によって2拍目と4拍目(オフビート)に来るのが特徴です。 このように音楽的には上記のような違いがあるのですが、踊る側にはなかなか差がわかりづらいらしく、一般的にはブルースはやや遅め(90~110拍/分)にしてテンポの違いで区分けをするようです。

一点だけ注意しなければならないのは、この「ブルース」というのはあくまでも社交ダンスでの「ブルース」であって、音楽の世界の「ブルース」とはまったく無関係です。ですから『社交ダンスの「ブルース」が好き』という人がいたら、その人は決してエリック・クラプトンの曲が好き、ということではないことを付け加えておきます(笑