本来、曲のテンポというのは作曲家が曲想にあわせて決めるものなのですが、ダンス音楽においてはあくまで「社交ダンスのための曲」ですので、曲のテンポは"ダンスのステップ"に合わせたものになります。
ですのでダンス曲を演奏する際にはテンポが命で遅くても早くてもダメ。ダンサーが踊りやすいように決められたリズムをキープし続けることが重要です。 参考までに、日本ダンススポーツ連盟(JDSF)の「JDSF競技規則」あるいはその上部団体である "International Dance Sport Federation"(IDSF)の「IDSF COMPETITION RULES」で社交ダンス競技大会や認定試験で規定している曲のテンポをご紹介します。
曲目 | 1分あたりの小節数 | テンポ(4分音符換算) |
スローフォックストロット | 28~30小節/分 | 112~120拍/分 |
クイックステップ | 50~52小節/分 | 200~208拍/分 |
ワルツ | 28~30小節/分 | 84~90拍/分 |
ヴィーニーズワルツ | 58~60小節/分 | 174~180拍/分 |
ジャイブ | 42~44小節/分 | 168~176拍/分 |
タンゴ | 31~33小節/分 | 124~132拍/分 |
ルンバ | 25~27小節/分 | 100~108拍/分 |
チャチャチャ | 30~32小節/分 | 120~128拍/分 |
サンバ | 50~52小節/分 | 200~208拍/分 |
パソドブレ | 60~62小節/分 | 240~248拍/分 |
また、競技大会の曲目にはないパーティーダンスの「ブルース」「ジルバ」「マンボ」「サルサ」の一般的なテンポは以下のとおりです。
曲目 | テンポ(4分音符換算) |
ブルース | 90~140拍/分 |
ジルバ | 150~200拍/分 |
マンボ, サルサ | 120~136拍/分 |
競技のときは上記のテンポに従わなければなりませんが、ダンスパーティーなどでの演奏はもちろんこれに限ったわけではありません。特に社交ダンス愛好者の年齢はどちらかというと高い(40~60歳)ので、速いテンポでは踊る側がキツイ!ようです。
ですから、上記のテンポを参考に参加されているダンサーの習熟度や年齢などを考慮したテンポ設定を主催者側と打ち合わせるのがベストだと思います。 実際このテンポで演奏してみると、曲によっては思った以上に遅い或いは早いテンポだったりして「えぇ~、こんなテンポでいいの?」と驚くことがあります。マンボやサンバなんかは私の頭の中のイメージではもっと早いテンポでアップテンポな曲ですから、上記のテンポで「マンボNo.5」を演奏すると全く違和感を感じるんですよね(^^;
比較的ノリのよいラテン系の曲をダンス音楽として演奏するときなどは、テンポの思い違いに注意が必要です。 テンポが乱れないようにするため、実際の本番演奏ではリズムセクション(主にドラム)がメトロノームをイヤホンで聞きながら演奏したり、リズムボックスを使ったりして、テンポが変わらないようにすることがあります。
曲中にアドリブがある場合、コンサートやライブではアドリブ奏者が自由勝手に演奏できますが、社交ダンスのバック演奏では、自分のテンポやペースでブイブイ吹くことは許されません。フレーズはアドリブでも『キープ・テンポ』での演奏が必要です。 そもそも踊っている人たちはダンスに夢中ですから、アドリブ奏者の演奏なんか聞いていないんですよね。たとえ超絶技巧の素晴らしいアドリブであっても、テンポが乱れるようでしたら「そんな演奏じゃ踊れない」と白い目で見られてしまいます。。。 逆に、テンポさえ合っていれば簡単なフレーズの繰り返しでもOK。私のようにアドリブが苦手な奏者でも何とかごまかすことができる、ということにもなりますね。
ただ、踊り疲れて休んでいる人たちはしっかりと聴いているのでご注意を(笑